城山 三郎|そうか、もう君はいないのか (新潮文庫) 文庫

ネタバレ書籍紹介

彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる──。
気骨ある男たちを主人公に、数多くの経済小説、歴史小説を生みだしてきた作家が、最後に書き綴っていたのは、亡き妻とのふかい絆の記録だった。終戦から間もない若き日の出会い、大学講師をしながら作家を志す夫とそれを見守る妻がともに家庭を築く日々、そして病いによる別れ……。
没後に発見された感動、感涙の手記。

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母が亡くなって、割とすぐに手に取った本。
今は、実家に置いてある。

母がなくなって2年が過ぎて、再び読み返した。

初めて読んだ時は、愛する人を亡くした喪失感、ずっと一緒にいると思っていた人を突然亡くし、この先どうやって生きていこうという心情が自分と重なった。

一方、闘病の末に亡くなられたとのことで、心臓突然死である日突然母と死別した自分とは違うとも感じた。

再び、読み返してみて、

癌とわかってから四ヶ月、入院してから二ヶ月と少しでのお別れ。

元気だと思っていた人に突然亡くなられて、信じられないような受け入れがたいような気持ち。

四ヶ月の闘病で亡くしたのだとしたら、どうだっただろうか。

おそらく、悲しみは変わらない。

闘病の四ヶ月間は、もしかしたらもっと辛かったかもしれない。

ある日突然亡くなられて、むせび泣くようなこともあったけれど、どうしても信じきれず、どこかにいるんじゃないか、寝ているだけじゃないのかと思い、火葬しお墓に埋葬した後も悲しみが抑えられてしまうような感覚があった。

「さようなら」が言えなかった。

四ヶ月の闘病で亡くしたのだとしても、きっと「さようなら」は言えなかったと思う。

告別式では、「ありがとう」と言った。

火葬する時、「生まれ変わっても、お父さんとお母さんの子どもで産まれたい」と言った。

実家のお墓を新しく建て直して埋葬した時、「またね」と言った。

別れが悲しすぎて、1年間自宅に遺骨を置いておき、一周忌法要で父親の遺骨を納骨したという人が、

納骨をしたら、もう父はこの世にいないんだと納得して

素直に「さようなら、たくさん愛してくれてありがとう」と伝えることができました

と言っていた人がいた。

でも、私はいまだに「さようなら」は言えていない。

母こそきっと、あの世から私たち家族に「さようなら」を言えていないんじゃないかと思う。

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