「夜爪を切ると親の死に目に会えなくなるよ」と言われて育ち、爪は休日の朝か夕方までに切っていた。
爪を切り忘れて夜になってしまったら、月曜日の朝切った。
夜爪を切ったのは記憶に無い。
それでも、母の死に目に会えなかった。
母は、たった一人 ある日突然ひっそりと部屋の布団で亡くなっていた。
母の死に目に会えなかった悔しさや無念さは当然あるけれど、母の死に目に会えたからとて私に何ができた訳ではない。
ただ、
母は最期、父や私を含めた3人娘や孫に会いたかっただろうなと思う。
家事・育児を一手に引き受け、田舎の農家ゆえの義両親からの理不尽な扱い、義父の看病、実家依存の二人の義妹にも苦労してきた。
いつも一生懸命で、いろいろ頑張ってきた、愛情深くて家族で誰よりも愛して愛されていた母。
もう長くないと分かっていたなら、みんなで旅行や食事にだって行けたはず。
せめて最期くらい、
親孝行とか関係なく、ただ母の為に みんなで見送ってあげたかったなって、
心の底から思います。
今はもう、いつでも空いた時間に爪を切っています。
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